転卵

転卵(てんらん)について解説しておきます。転卵はその名のとおり卵を転がすことです。孵化中の卵は転卵することで卵の中の水分が撹拌(かくはん)されます。これにより栄養分が偏ることなく卵の中のヒナに行き渡ります。

ペンギンの転卵の様子

野生の鳥は、母鳥が定期的に脚やお尻で卵を転がしてくれますが、人工孵化の場合は人間が転卵を手伝ってやる必要があります。

転卵回数

記しをつけるとわかりやすい

転卵は、2-4時間に1回、上下に180度回転させるのがよいとされています。中の栄養分が撹拌されればいいので、角度などは神経質にならず、とりあえず動かしとけば大丈夫です。自動孵化器では2時間に1回左右に45度づつ卵が傾きます。手動転卵するときは卵に記しをつけておくとわかりやすいです。

転卵をサボると障害をもった子が生まれやすくなります

転卵をしなかったからといってすぐに卵の中のヒナが死ぬことはありませんが、転卵回数が少なくなると孵化率は低下します。また、開脚障害のような障害を持ったヒナが生まれやすくなるので、注意してください。

特に孵化開始から最初の1週間の転卵は重要なのでこまめにしてください。入卵1週目は4時間に1回程度のペースで、残りは6時間に1回程度しておけば問題ないようです。並ウズラを手作業で孵化させたことがありますが、6時間に1回程度のアバウトな転卵で孵化率は30〜40%程度でした。

手作業で孵化させるときのポイントとしては、転卵をこまめかつ丁寧にすることです。急激に卵を動かしたり、転卵角度が大きすぎると中止卵になりやすいようです。殻への癒着(ゆちゃく)は卵の中のヒナの位置が少しでも動けば防げます。冬場は卵の温度が下がりやすいので素早く作業してください。

孵化スタート

Amazonのデライトベースで購入した並ウズラの種卵

種卵の選別

Amazonで注文した並ウズラの卵が届いたのでさっそく孵化スタートしてみます。

梱包もしっかりしています

デライトベースという店舗で購入しました。開封してみるとご覧のとおり。こちらの卵は梱包もしっかりできているので安心です。

ヒビ割れや破損は1つもないです。

14グラム超えの卵も

購入した種卵は30個入。さすがに、一度に30個も暖めると全部生まれたらタイヘンなことになります。まずは暖める卵を選別することに。卵は大きめのものを選びます。平均的な卵は12グラム程度。大きなものでは14グラム超えも。

軽い卵では10グラム台も。小さいのは外しておきます。

左=14g、右=10g

左が14グラム、右が10グラム。比べてみると同じ卵でも大きさに違いがあるのがわかります。

孵化器の準備

タンクに水を補充

孵化器のセッティング。まずはタンクに水を満たします。付属のスポイトは小さくて使い勝手悪いので、ダイソーで大きめのものを買いました。

サイド4箇所のタンクにも注水

春先でまだ湿度が低いのでサイドのタンク4箇所にも補充しておきます。

アルミホイルで転がらないよう固定

この孵化器はニワトリの卵用でウズラにはサイズが大きく、そのままでは卵がコロコロ転がるので、アルミ箔で調整。セレクトした大きめの卵(12-14グラム)10個をセットします。卵は尖った方を下に向けます。

今回は37.8度に設定して、孵化が始まりました。

温度が安定しないため、ダンボール箱を被せて完了。これで、温度、湿度が安定します。あとは、ブザーが鳴ったら給水するだけ。給水は2日に1回のペースです。季節によってペースは変わります。空気が乾燥した冬場は水の減りも早いので注意です。

孵化器(孵卵器)の使い方

中国製の鶏卵用インキュベータ

孵化器の機能について簡単に紹介します。私が使っているのは写真の中国製インキュベーターです。自動転卵機能搭載で、卵をセットしたらあとは定期的に水を足すだけで自動で孵化させることができます。Amazonで1.2万円程度で買えます。

温度を上げるヒーターと、湿度を上げるファンが底面に配置してあります。

サーモスタット湿度センサーが庫内の温度、湿度を感知し、ヒーターやファンの電源をオンオフします。

棒状の金属が温度計

底面に水を入れるタンク(水路)があるので、付属のボトルで注水します。

底面のキャナル(水路)に加湿用の水を

電源入れて温度を設定します。セットボタン長押しで温度を変更できます。37-38度程度が適温です。39度を超えると卵がダメになるので注意してください。今回は37.6度に設定しています。あとはリセットボタンを長押しすると、日付がゼロになって、そこからカウントを開始します。

転卵は2時間に1回、左右に90度傾きます。

温度湿度が設定値を下回ると警告ブザーが鳴ります。寒い季節で温度が上がらないときは孵化器をダンボール箱で覆うなどして対策してください。

冬場は水タンクにタオルを差して湿度が上がりやすくする

また、冬場ややエアコンのきいた部屋では、湿度がなかなか上がらないことがあります。その際は、タオルやキッチンペーパーをタンクに差して、湿度が高くなるようします。

種卵(しゅらん)を手に入れよう

種卵の入手方法

ウズラの卵を孵化させるためには有精卵(ゆうせいらん)を入手する必要があります。有精卵は暖めるとヒヨコが生まれる卵です。スーパーで売っている無精卵は暖めてもヒナはかえりません。

Amazonで入手できる並ウズラの有精卵

有精卵はネットで購入できます。例えばAmazonでは並ウズラの卵30個入りが送料込みで2,200円で買えます。そのほか、ヤフオクなどでも手軽に入手できます。

ネット購入の注意点

春先でも車内の温度は40度以上になる

ウズラの卵も生き物です。温度が39度を超えると卵が死んでしまいます。特に輸送中のトラック内は高温になりやすく、適切な梱包がされてないと春先でも卵がダメになりやすいので注意してください。

ウズラ大学の種卵は到着時点で熱にやられてダメでした

以前、ウズラ大学という販売業者から種卵(15個)を購入したことがありますが、梱包が不十分で、輸送中の高温で卵が全部ダメになっていたことがありました。暖かい時期はクール便や発泡スチロールのような断熱ケースで梱包、発送してくれる販売店を選んでください。

オークションの注意点

しっかり梱包してくれる出品者を選ぶように

ヤフオクなどオークションでの販売も注意が必要です。上の写真はしっかり梱包されて送られた商品です。籾殻(もみがら)の中に卵を入れてくれるので温度変化にも比較的耐えられます。このように取引してくれる出品者は安心して取引できます。

こんな状態で届くことも…

一方で、出品者によっては梱包が雑で卵が破損した状態で届くケースも珍しくないです。以前落札したケースでは、ペラペラの箱に卵を放り込んで定形外郵便で送ってきたため、卵が半分以上潰れて届いたことがあります。

悪い評価が複数ある出品者は避ける

良い出品者の見極めは評価を参考にしてください。悪い評価が複数ついている出品者は避けたほうがよいです。こうした出品者は、種卵の状態も悪いものが多いです。親鳥の栄養状態が悪いと障害を持ったヒナが生まれやすくなるので注意してください。

スーパーの卵について

10個に1個程度有精卵が混入するらしい

スーパーで売っている卵についても触れておきます。基本的には無精卵なので暖めても孵化することはありませんが、10個に1個ぐらいの割合で有精卵が交じることもあるようです。

ウズラは体が小さいためオスメスの判別が難しく、結構な確率でメスの群れにオスが混入するようです。するとオスの混ざったケージ内のメスがすべて有精卵を産んでしまいます。スーパーのウズラは1パック100円程度で買えるので、5パック買えば50個中、5個ぐらい有精卵が入っているかも。これなら卵を安価に調達できますね。

オスが混ざるとカゴの中はすべて有精卵に

ただし、ウズラ農家によっては、オスを見つけた段階でケージから抜き取るので、有精卵が混入しないパック卵もあります。有精卵の混入率は生産農家によって違うようで、1つも有精卵が入っていないこともあります。

用意するもの

インキュベーター(孵化器)

はじめに用意するのがインキュベーター(孵化器)です。孵化(ふか)するまでの間、卵を温める機械です。いろんな種類がありますが、機能的にはほとんど変わりありません。庫内を孵化に必要な温度(37-38度)に保った上で、転卵(てんらん)と呼ばれる卵を定期的に動かす機能を備えています。転卵は卵の中のヒナに栄養を行き渡らせたり、ヒナの体が卵の殻に癒着(ゆちゃく)するのを防ぎます。インキュベーターはAmazonで1.2万円程度で手に入ります。

ヒヨコ電球(保温電球)

インキュベーターの予算はちょっと…という方は、水槽やプラケースに保温電球(ヒヨコ電球)という保温専用の電球を設置して、温度調整用のサーモスタットという機器を設置する方法があります。保温電球サーモスタットのセットで5千円程度。保温電球はヒナから成鳥になるまでの間(1ヶ月程度)も必要になりますが、市販の白熱電球(40Wで1個100円程度)などでも代用できます。

小型孵化器をレンタルしているとこも

ただし、保温電球による保温では、昼夜を問わず1〜2時間に1回、人の手で卵をコロコロ動かしてやる必要があります。夜も定期的に転卵する必要があるのでインキュベーターを買ったほうがラクチンではあります。インキュベーターはレンタルしているところもあります。新品買って、孵化が終わったらオークションで売るのもよいです。

サーモスタット

設定した温度になると電源オフになる

サーモスタットは温度を調整する機器です。設定した温度になると自動で電源がオンオフになり、保温電球での加熱が止まります。温度が下がるとスイッチが入ります。これによって孵卵器の中を一定の温度に保つことができます。設定温度が40度まであるものを選んでください。

温度・湿度計

湿度計があると便利です

その他に、インキュベーター内の温度と湿度を管理するため温度・湿度計があると便利です。特に冬場は空気が乾燥しているため湿度の維持が難しくなります。湿度計があれば庫内を適切な湿度になるよう管理できます。最近はスマホと連携して外出先でも温度・湿度を確認できる製品もあります。

爬虫類用のパネルヒーターは温度不足になることも

注意点として、ペットヒーターのような暖房器具は、パネル表面の温度が指定の温度になるだけで、庫内の温度を上げる能力が不足する場合があります。必ず温度計で庫内の温度が37-38度に上がっていることを確認してください。

ウズラとは

並ウズラメス

ウズラは、鳥綱キジ目キジ科ウズラ属に分類される鳥類です。食卓でおなじみのウズラの卵の親鳥といったほうがわかりやすいですね。ウズペディアで紹介するのは、主に採卵用に繁殖されている養殖ウズラの「並ウズラ(日本ウズラ)」です。ちなみに、野生種のウズラは環境省のレッドリストで絶滅危惧II類 (VU)に分類されています。

並ウズラ(日本ウズラ)

並ウズラは日本でもっともポピュラーなウズラです。別名・日本ウズラとも呼ばれます。英語では「Japanease Quail」ですね。大きさは大人のげんこつぐらいです。小さくて飼育スペースもとらないため、ペットとしても飼いやすいのが特徴です。卵から孵化させるのがブームになっていることもあり飼育する人が年々増えています。ただし、オスの鳴き声はけっこう大きく、マンションや住宅地での飼育には向いていません。[詳しくは「飼育上の注意点」を参照ください]

ヒメウズラ(姫ウズラ)

ヒメウズラもペットとして人気です。並ウズラと比べると、体長が二まわりぐらい小さい上に鳴き声も小さく、さらにいろんな色の個体が生まれるため人気です。英語で「Chinese Quail」と呼ばれることからもわかりますが、中国~東南アジアに生息する野生種のウズラです。

そのほか

コリンウズラ

そのほかに、アメリカ中東部やメキシコ原産のコリンウズラや、ヨーロッパ原産のヨーロッパウズラ、ヨーロッパウズラの変種の白ウズラなどの種類がいます。